―――1998年7月。始まりは今から約5年前にサカのぼる―――
ちょうどその頃るふは2度目の出産を約2ヶ月後に控え、蒸し暑い夏をうんざりして迎えていた。 1年前に始めたアルバイト、いわゆるパートタイマーの仕事を出産後も続けたいというるふの希望を汲んでくれた勤務先の社長夫妻は、それまでの店頭での接客が体に負担がかかるコトを配慮してくれ、その上たいしてイミはないと思われる以前の勤務会社での経験があったコトで別の業務に異動させてくれたばかりだった。 当時はまだ会社でも経理専用の端末処理をするだけの古いPCしかなく、また我が家にも電脳世界の入り口となる白亜の魔法の小箱なんぞあるハズもない。 今のようなネット生活とは無縁の、仕事と育児とお産の準備でバタつく日々を過ごしていた。
そんなある休日のコト。
初めて出かけて行った阿蘇の自然型テーマパーク。ソコでよくある動物と触れ合うコーナーに入ってみた時のコトである。
そこでるふ一家は予想もしていなかった生き物と遭遇する!!
それは…
!!(◎△◎;)||||||
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なんとグリーンイグアナっっ!!
グリーンイグアナはメキシコ等の地域に生息する大型のトカゲである。 それまでトカゲといえば子どもの頃によく家の近くで見た小さくて黒っぽい色でこそこそと逃げ回る印象しかなかった。
コレがイグアナかぁぁぁぁぁ。
たしかに何度か名前を耳にしてはいたものの、実物を見たのはその時が初めてだった。 まだ幼体のようだ。予想以上のかわいらしさと色の鮮やかさに思わず見入ってしまうるふ。
イグアナってこんなに色キレイなんだぁぁぁ(◎o◎)
どうやら手に乗せてもオッケーらしい。 早速いつもの好奇心がしゃしゃり出て挑戦してみる。
「やっ、やわらか〜〜いっっ♪(◎▽◎)」
予想と違って小さなイグアナの体はすべすべしている。掌に感じる腹部の柔らかさが、小さくてもしっかり生きてるんだなーと感じさせる。 頭から尻尾の付け根までちょうど掌にすっぽり入るくらいの大きさで胴より長い尾は下へすーっと垂れている。 予想外の感触の良さに大感激のるふ。 目もヘビのように細くはなく、丸いくりっとした黒目で愛らしい。 撫でても嫌がることなくお利口サンにじっとしている。
「トカゲってもっとコワイカンジかと思ったけど、案外顔カワイイねぇ〜〜」
ふと近くでリクガメを眺めていたオヤジを呼んでみる。
「見て見てっ、イグアナ。カワイイっしょ〜」
しかし、一目見たオヤジ絶句。
「……ぅっ…。(~~;)」
なんやねん、ソレっ!!今「ぅっ」とか言うただろー。(▼□▼)
しかしオヤジの抵抗などお構いなしに勧めるお気楽主婦。 「ちょっと触ってみ。やわらかいよ〜〜(^▽^)
しかしオヤジキッパリ拒否。
「いや、そんなモン触らんでエエ!!\(>△<)」
どうやらヤツはこの手の類は苦手らしい。ちっ、ノリの悪いヤツだ…。(--;)
そんなワケですっかりイグを気に入ってしまった母親の様子を見ていた壱号機・カナも興味津々。 手に乗せてやると「やーらかーい」とニコニコ。虫系はちょっとニガテだが、動物が大好きな壱号機。 彼女は自分より小さい子どもにすら遠慮してしまうような性格なのだが、動物に対してはミョーに積極的な所があり、 以前ウマに頭をかじられ、ネコに顔面を引っかかれたという経歴を持つ4才児(当時)であった。
撫でてもおとなしいイグアナを怖がるどころかすっかり気に入った様子。 「かわいいね〜」「キレイね〜」 ナデナデしてニコニコしている。
その様子をそばで見ていた係のオジサンがふと指差して教えてくれた。
「大きくなるとアレくらいになるんですよー」
指差された方に何気なく視線を向ける。 と、今いる温室に何本か植えてある木の上の方に太いツルを張りめぐらせてあって、そこに掴まってノンビリしている物体が目に入った…。
!!(●△●;)|||||||
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そう、ソコにいたのは成長したグリーンイグアナっ!!
しかも10匹以上はいるッ!!しかもかなりデカい!!
体長1m前後はあるだろうか。遠目にみても決して小柄とは思えない。
しかし、この後るふは更にスゴいモノを目にしてしまった。
ちっちゃなイグアナ達のいた後ろ、温室の隅の一角はガラス張りになっているのに気づく。 中は暗くて目を凝らして覗き込んでもよく見えない。 何かいるのはわかるけど、中に置いてある木や石と同じような色に見えて想像がつかないのだ。 しかし、よくよく見てみるとソコにいたのは……
!!(○□○;)|||||||
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なんとさらに成長したグリーンイグアナっ!!
しかもとんでもなくデカい!!
尻尾まで入れたら自分の身長と変わらないくらいあるんじゃないのか…。(~_~;) こ、このカワイらしいちっこいのがこんなに変わるのか……??(~_~;) しかもどう見てもツラ構えはゴツいし、無愛想っぽいし、体ももう肌触りは良くなさそうだし、背中にはトゲがあるし、 何より抱えたらずっしりと重そうなのは見ただけでわかる。 成長したその姿はまさしく恐竜そのもの。カワイイ頃の面影はドコへやら。
しかし、その迫力ある姿を見た瞬間、るふの脳細胞は強烈な刺激を受けてしまったのだ。
か、カッコエエ〜〜〜♪(≧▽≦)
それまでトカゲとかヘビとかには一切興味がなかった。 別に子ども時代に恐竜に刺激を受けてハマったという経験もない。 動物は好きな方だ。他人には敢えて話さないが、実は結構犬好きだったりする。
もちろん目の前のイグアナは間違っても愛玩動物の対象となるようなモノではない。 グロい、デカい、コワそう、の三拍子が揃っているし。 幼体ならまだ可愛気があるが、成長して悠々と木の幹に陣取っているその姿はたいていのヒトならまず顔をしかめて嫌がるような風貌である。
しかし、気に入ってしまった。
もう殆ど直感的に。
ナゼかデカくなった成体を見たら余計気に入ってしまったのである。
元々ありきたりがキライなタイプのるふ。ヒトと同じというのは性に合わないらしい。
そういえば高校時代の卒業文集に寄せた一言にたしかこんなコトを書いていた…。
『10年後、私の家に遊びに来る時はぜひバナナをご持参ください。 チンパンジーとダイナミックに暮らしております。』
一応明記しておくが、別にサル面の男と結婚したいとかそーいう願望があったワケではない。
―――その頃テレビでチンパンジーと暮らす人(といっても動物学者かなんだかそういう人物)の様子を見たんだったか、自分もチンパンジーと一緒に暮らすんだーというワケわからんムチャな希望をマジで抱えていた時代だったのだ。
しかし、実際調べてみると彼らは人間に近いあれほどの知能を持ちながら、排泄の躾が全く身につかないらしい。 どうりでテレビなんかで芸をしたりするチンパンジーがみんなオムツをはいているのか〜、と納得。 動物園や飼育施設等ならまだしも 一般家庭で排泄のしつけがなっていない高度な知能を持つ生き物と暮らすのはかなりタイヘンだ。 ソレ以前に普通の家庭で飼う許可が下りるのかという問題もあるが…。
ともかくトイレトレーニング不可という理由で、お気楽管理人のチンパン同居作戦はあっけなく崩れ去った―――
たしかにチンパンジーもイグアナも決して一般家庭で気楽に飼えるサイズではない。 たぶんコレが5,60cmソコソコの大きさくらいだったらたいして興味も持たなかったのだろう。 しかし、ナゼか再びデカくて一般家庭用ペットに不向きな生き物に魅せられてしまったるふ。
考えてみれば、小型種より大型種、小動物より肉食獣が好きなタイプだ。
どうしてと聞かれても自分でもわからないが。
無意識に惹かれてしまうのは何かの因縁なのだろうか。
それとも単に自分がチビだからか。
そういや男もツラがイイのより背が高い方が好みだしな〜〜…(^_^;)(思わず本音)
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やはり潜在的なコンプレックスなのか…??(-_-;)
「イグアナ、気に入った〜〜♪コワそうで迫力あるしねぇ。恐竜みたいだしねー。 でも目はくりっとしててカワイイとよね〜。なんか見た瞬間に気に入ったよ〜。 あんなんだったのかーイグアナってぇ〜♪なんか太古のロマンってカンジだよねー!!! でもってデカくなるらしいとよねー。普通の家で飼えんのかな〜。欲しいな〜〜!!」
そんなこんなでその日帰りの車の中でもずーっと陶酔していたるふ。 スッカリ気分はGETの道まっしぐら。
しかし!! ちょうどその頃我が家には避けようのない一大イベントが待ち構えていた。
ソレは……………………………
いよいよカウントダウン態勢間近の出産!!
そう、経験者ならお分かりかと思うけれど、子どもが生まれるというコトはかなり生活リズムが変わる。 元々何かペットを飼っている家庭ならだれか家族が世話でもしてくれるか、実家に預けるかという対策も立てられるが、臨月前にいきなり頭数が増えても…。
しかもソレが誰も世話したコトない、おまけに飼うなんて承諾もしてないイグアナときた日には、 いくらお気楽主婦と言えども、今の時期は家族はもちろん親にも医者にも味方してくれる人間はいないだろうというコトくらいはわかる。
しかたない。とりあえずは目の前のお産というノルマをクリアするしかなさそうだ。
「本人のやる気(根性)とパワー(努力)でたいていのコト(夢)は叶う』 がモットーのお気楽主婦。
結婚してるからとか子どもがいるから時間がなくて…というのはウソだと思う。 たしかに自分も口にするコトはあるけど、ホントにやりたいコトはやろうと思えばやれるのだ。 これだけはやりたい!!と思ったコトは「やってみりゃナンとかなる」という半ばいい加減とも思えるポリシーでやってきたし。
"さーてほんじゃあ気長に頑張るか〜♪( ̄ー ̄)"
こうして、たぶん、いや間違いなく長期戦で挑むコトになるだろうイグGETへの決意を固めるコトとなる。
この時まだ自分が既にハチュの道にハマってしまったコトにまだ気づいていない、 臨月を迎える寸前のお気楽主婦であった……。
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